Yacchiro Banana

Concept, Graphic, Web, Logo, VI+CI, Package, Product, Art Direction, Photo Direction

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【Background】
熊本県八代市の新しい農産物として、高級国産バナナである「やっちろバナナ」が誕生。そのブランドコンセプトとステートメント、並びにロゴのリデザイン、パッケージデザイン開発などを担当した。
本来バナナは熱帯に育つ植物だが、「やっちろバナナ」は新技術の「凍結解凍覚醒法」を利用して、日本国内での栽培が可能となっている。「凍結解凍覚醒法」とは、植物の種子や細胞を時間をかけて冷却し、また解凍することにより、耐寒性を備えさせる技術だ。

D2Cサイトを用いた販売活動を行うためのブランディングの相談だったのだが、私が最初に気になったのは、1本600円前後にもなる高級な価格だった。
新技術により希少な国産バナナを購入できるようになったというのは一つのバリューだが、それだけの理由ではなかなか手が出しづらい価格帯だと感じた。
そこで着目したのは、この凍結解凍覚醒法は、副次的に無農薬で農作物を作ることができるので、「皮ごと食べることができます」と説明された点だった。そこから下記のようなステートメントを思いつく。

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【Statement Design】
「ちょっとだけ、環境と身体にいいことを。」というステートメントを謳う。つまり、「やっちろバナナ=環境負荷の小さな農業で、身体と環境をヘルシーにするブランド」という考え方だ。
農薬や化学肥料に依存する農業は、水質汚染や土壌の劣化を招き、生物の多様性を損なう要因にもなっている。しかし、やっちろバナナは、徹底した温度管理を行う新しい技術を使うことによって、無農薬栽培という環境負荷の少ない方法をとることを可能にしている。
「皮ごと食べられるバナナ」というのは、フックとしては面白いが、やや息の短いバリューであり、長期的な目線が必要なブランディングの本来性とは離れる。だが、皮ごと食べることができるほど「安全でヘルシーなバナナを作る」ことにフォーカスを当てれば、これはブランドの中心の価値となり得ると考えた。

身体と環境を同時にヘルシーにし、持続可能な農業を作ることが、(もちろん安全安心・美味しい作物を作るという前提の上で)やっちろバナナがブランドとして目指すところのストーリーであり、社員も含むステークホルダーの意識形成の上でも大事な与件と考えたのだった。

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また、新技術を話の中心に据えるのではなく、ビジョンの話にすることによって、1本600円前後という高価な値段になる理由もクリアできる。ここまで高価だと人を動かすには「納得できる理由」が必要となるが、ウェルビーイングなファクトに目を向けさせることによって、そこに付加価値を感じられる仕組みを作り、消費者の納得感を獲得することができるのだ。

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【Logo Design】
もともとロゴは、マークに「やっちろバナナ」の文字と、「汐風の甘み」という商品名のロゴタイプが一緒になったものが存在していた。しかし、それではブランドの名称と商品名を分けて使用しづらいなどの弊害が出やすいと考えたので、その旨を説明し、ブランドロゴの使い方を整理することにした。また、ステートメントを受けて、オーガニックでヘルシーなブランドであることを強調できるロゴも必要だと考え、全体としては雰囲気はなるべく変えないよう配慮しながら、リデザインロゴを追加で作成した。
既存のロゴもある部分ではそのまま使用する。場面に応じてロゴの使い道を変えるスキーム開発に力を入れた。

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【Package Design】
パッケージは、プラスチックフリーな素材を採用。リサーチした結果としてバナナはプラスチックの梱包が多かったが、それは「環境と身体にいいこと」を謳うブランドとしては相応しくない。パッケージはブランドの中心ではないが、ブランドストーリーの実行とその体現のために重要なデザインファクターである。そのため、紙とインクには環境配慮した素材を選んだ。個包装には、グラシン紙を採用。透け感のあるグラシン紙を使用することで追熟の様子がわかり、食べ頃を見逃さないというメリットもある。

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【Web Design】
ブランディング機能を持つECサイトのディレクションを依頼されたが、今後の展開などを見据えて、それは分けて使用した方が良いとアドバイス。結果としてブランドサイトとECサイトは機能を分けて運用することとなった。今後、他の農産物のブランドが登場する可能性を含んだためのスキーム整理なので、これからも並走し、改良していく。ブランドサイトのTOPは熊本県八代市での栽培風景を撮影し、動画で展開している。

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Producer: Yoshinao Sato, Go Sakai
Director: Tasuku Shimoji, Mayuu Nagashima
Production Manager: Keisuke Shimada
Art Director / Graphic Designer: Yu Miyazaki
Photographer: Kazune Kogure
Production: PARAGON
Client: Kumamoto Fruits & Vegetables Shippers’ Association, Inc.
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