pixiv
Concept, Graphic, Logo, VI+CI


【Background】
pixivは2007年にサービスを開始し、2025年現在、pixivのユーザー総登録数は1億人を突破し、230以上の国・地域で利用されている。サービス開始当時に比べ、インターネットを取り巻く環境は大きく変化し、スマートフォンやタブレットによる利用の増加、日本国外のユーザーの増加など、利用状況も変化している。サービス開始以来、創作活動を愛する多くのユーザーがpixivに集う中で、新たな趣味や熱中できるものを発見したり、様々な出会いや交流が生まれてきた。そうした出会いや交流の誕生を今後も支え、よりいっそう加速して未来へつなげていくことを目指し、16年ぶりにロゴをリニューアルすることとなった。制作チームとして、以前からpixivのMVVの策定などを担っているStudiesがステートメントやタグラインを開発し、MY HEADはロゴ、ブランドガイドラインなどのBIデザインを担当した。



【Logo Design】
今回、Studiesが新たに開発した「遊びを見つけよう。」というステートメントを軸にリニューアルロゴは制作。
デジタル空間で生まれたpixivというサービスを象徴すべく、幾何学的な「0」と「1」をデザインの基調としている。ユーザーや利用環境の多様化を鑑み、さまざまな環境における視認性の高さや、他の要素と組み合わせた際のレイアウトのしやすさも重視。
一方、頭文字である「p」の一部が欠けていたり、角が丸く削られているなど、わずかに揺らぎを加えることで、創作活動において予期しない遊びを見つけ出す人間の豊かな創造性を表現している。カラーは「創作活動が楽しくなる場所を創る」という思いを受け継ぎ、従来のロゴと同じ鮮やかな青色を採用した。


新たに策定した「遊びを見つけよう。」というステートメントを受けて、pixivを利用する作家たちがものづくりする方法は一体どういうものが多いのだろうと、まず考えた。そしてその方法は、クロード・レヴィ=ストロースが『野生の思考』で提唱したブリコラージュ(日曜大工)的な方法論が多いように私には感じられた。pixivに上がる多くの作品には作り手の温度感があり、そこに「人間性」が介在するためだ。
創作のための思考法は大きく2つのパターンがある。それは「科学的思考(エンジニアリング)」と「野生の思考(ブリコラージュ)」である。
建築のように最初から最後まで、「概念」を組み合わせて一部の隙もなく完成にまで到達する方法が「科学的思考」だ。対してブリコラージュは、冷蔵庫にたまたま入っていた具材から成る料理のように、手元にあるありあわせの「記号」を組み合わせて構築する手法だ。故に、常に完璧ではなく、そこには「揺らぎ」や「ズレ」が存在する。しかし揺らぎがあるからこそ、そこには人間性が入り込む余地があり、「記号」であるが故に、分解して次のものにも使いやすい。そのあたりも、誰かの創作の欠片を受け継ぎ、さらに別の作品やミームへと変容させるpixiv内の作家の創作方法と親和性があると考えた。

レヴィ=ストロースによれば、ブリコラージュを用いた作品で最も有名なものは「神話」であるという。神話は、様々な地方に伝わる伝承や断片の記号を寄せ集めて作られている。そのため、そこには計算された話の筋は存在していない。
そして、神話の基本となる要素は「破壊」である。必ず禁忌を破る者が出てきて、それによって世界が動いていくというものだ。安定している世界では変化は生まれない。破壊が創造を担うのだ。pixivの中でも、作品同士の引用・アレンジ・再解釈といった再構築的な営みを通じて多様な表現が生まれ続けており、そこに再びブリコラージュとの共通項が見えてくる。
ブリコラージュから成る創造欲は、人間が自己実現し、社会とつながり、変化を生み出すための根本的な動機付けである。これらの要因が組み合わさることで、人間の創造性は絶えず刺激され続けるのだ。上記のような考えからブリコラージュ的な発想に基づいた創作方法を表すため、「0」と「1」のパーツを断ち落とし、手持ちのナイフで角を丸くし、縛って組み合わせるようなイメージでロゴタイプを開発。また、「p」は野生の思考の産物たるトーテムポールの眼差しをイメージして制作している。これはステートメントに添い、「遊びを見つける」という意味も暗に込めている。


【Brand Guideline Design】
ブランドガイドラインとしては、「遊びを見つけよう。」の指針通り、できるだけ制約を少なくしユーザーに自由に使ってもらうことを留意した。しかし1億ユーザーを抱えるプラットフォームであるため、そのバランスには配慮した。「p」に関しては、さらに自由度を増して遊べるよう、自由に扱って良いという項目も設けた。全てはユーザーが自由に創作できるために。そんな思いで制作している。




Creative Director: Kei Sakakibara(Studies Inc.)
Copywriter: Kei Sakakibara(Studies Inc.)
Art Director / Graphic Designer: Yu Miyazaki(MY HEAD LLC)
Production: Studies Inc.
Client: pixiv Inc.
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